プロペルを使った矯正治療
PROPEL(プロペル)とは
プロペルは、歯肉の切開と剥離をしないで歯肉と骨に小さな穴を開けるための器具。プロペルは、コルチコトミーほど効果は大きくないが、適応となる症例は多く、侵襲性があまりなく、副作用が生じにくい。プロペルに関する論文の数は少ない。
※Propel: プロペルMOPs (Micro-Osteoperforations:微小骨穿孔)。
プロペルの使用方法(by Mani Alikhani in AAO, 2015)
①各治療段階において動かしたい歯(単数または複数)を決める。
②歯を動かしたい時期にプロペルを使用する。
③たくさんの量を動かしたいときには、少なくとも数ヶ月ごとにプロペルを使用する。
④動かしたい時期に動かしたい歯の近くにプロペルを使用する。
⑤アンカレッジとなる歯の近くにプロペルを使用していけない。
比較
①コルチコトミー: コルチコトミー(歯槽骨皮質骨切術)とは、歯肉を切開し剥離して骨を露出させ骨に切り込みを入れ骨組織の代謝を活性化させる術式で、歯周外科で用いる器具を使用する。歯の移動が速くなるという論文が多い。効果は大きいが、適応症が限られ、侵襲性が大きく、副作用が生じることもある。オステオトミー(歯槽骨切術)やヘミオステオトミーもある。
②Piezoincisions(ピエゾシジョン): ピエゾシジョンとは、歯肉を切開(剥離しない)して骨に切り込みを入れる術式で、ピエゾサージェリー(三次元超音波振動により骨切する器具)を使用する。コルティシジョンはピエゾシジョンと同じ術式でメスで骨に切り込みを入れる。
③Propel(プロペル): プロペルMOPs (Micro-Osteoperforations:微小骨穿孔)。プロペルは、歯肉の切開と剥離をしないで歯肉と骨に小さな穴を開けるための器具。プロペルは、コルチコトミーほど効果は大きくないが、適応となる症例は多く、侵襲性があまりなく、副作用が生じにくい。プロペルに関する論文の数は少ない。
以上の「①②③」の作用機序はほぼ同じでしょう。一般的な比較の話が下記となります。
・効果は、コルチコトミーが大きい(2-4倍のスピード?)、ピエゾシジョンが中くらい、プロペルが小さい。
・適応症は、コルチコトミーが少ない、ピエゾシジョンが中くらい、プロペルが多い。(適応症というよりも矯正医が使いやすい、患者さまが受け入れやすいと言う意味で)
・侵襲性は、コルチコトミーが大きい、ピエゾシジョンが中くらい、プロペルが小さい。(体を傷つける度合い。たとえば、顔が腫れることがあるとか)
・副作用は、コルチコトミーが多い、ピエゾシジョンが中くらい、プロペルが少ない。
・費用は、コルチコトミーが高い、ピエゾシジョンが中くらい、プロペルが低い。
※以上は個人差が大きいです。
歴史的な流れ
・歴史的には、オステオトミー → コルティコトミー(1991年) → コルティシジョン(2009年) → ピエゾシジョン → プロペルMOP(2013年)の順で考え出されてきた。
オスエオトミーのころは骨を切断分割して骨と歯を一つのかたまりとして移動するので歯が速く動くと考えられていたが、そうではなくてRAP ( Regional Accelelrated Phenomenon)によって骨代謝活性が高くなることによって歯が速く動くという考えが出てきたことによって新しい術式が考え出されてきた。
※RAP ( Regional Accelelrated Phenomenon)
※局所に加えた外科的な刺激が骨吸収と骨新生を促進する現象(Frost)
※骨損傷後の97%に生じる(Shih, Norrdin)
※外科処置後の2, 3日以内に始まり、通常1-2ヵ月でピークを迎え、6ヶ月ほど続く(Akano)
※文献考察よりRAP現象は4ヶ月継続する(Mathew, Kokich)